PART4 薬局はどう捉え、どういう体制で臨んでいるのか

患者や医療機関の動向に左右され消極的になる薬局も

 「報酬は10点つくけど、こっちが熱心に説明しても患者さんからは“しらけちゃってる”ような感触を受ける。彼らにとって大事なのは、自分の病気が治るかどうか。ルール通りに後発品の説明をしていると、そこがぼやけてしまうんですよ」と、薬剤師のCさんは言う。最近は変更可の処方せんがきても、患者が聞いてこなければ、そのまま先発医薬品を調剤する。説明を尽くしても後発医薬品に変更しない患者が多いため、無駄骨を折っているような気がしてきたというのだ。
 また、ある薬局では当初、患者のニーズもあるし、後発医薬品に積極的に対応したいと考えていた。ところが、蓋を開けてみると、メインで処方せんを受けている病院の方針がそうではないことがわかり、現在はまったくと言っていいほど取り組んでいない。こうした医療機関の対応に左右される薬局も決して少なくないようだ。

患者に正しい知識を持ってもらうことを第一の目的に

 「患者さんの費用負担が減る――」。この制度が始まるにあたり、薬剤師のなかには、患者への利益をこう捉えた人も多いはず。しかし、ここだけにとらわれすぎると、「安い後発医薬品に切り替えさせる」ことが目的になってしまい、Cさんのようなジレンマに陥りかねない。
 ある薬局薬剤師は、「後発医薬品に対応するのは、患者の希望に応えるための義務」と言い切る。そして、安易に様式に流されるのではなく、患者に正しい知識を持ってもらうことを第一の目的にしている。「後発医薬品=すべて粗悪品という認識はもう古い。まずは薬剤師自身が後発医薬品の品質を重視したうえで情報収集を行い、患者さんに的確にアドバイスできるように勉強しなければいけない」とも。
 この薬剤師が示唆するように、熱心に勉強をはじめた薬剤師も多く、「学ばされることが多い」と語る。そうした薬剤師の姿勢や取り組みが最終的には患者によりよい利益をもたらし、薬局や薬剤師への深い信頼にもつながる。今回の制度改正を、その大きなチャンスとして捉え直したいもの。そうすれば、医療機関の方針に振り回されることもないし、おのずと薬局薬剤師が患者にとるべきスタンスが見えてくるはずだ。

選択基準は「品質」、「メーカーの体制」、「流通」を重視

 一方、経営の視点から処方せん様式の変更にメリットがあると判断する薬局もある。「場合によっては薬局の在庫金額の圧縮にもつながるし、先発医薬品に比べて多少よい後発医薬品の値引き率も魅力的だ」と率直に語る。ただし、「面分業になると、突出した使用数量の先発医薬品がないため、後発医薬品への変更希望が多くなると果てしなく在庫金額が増え、資金繰りが大変になるのではないか」とも危惧する。
 どのような種類の後発医薬品をどれくらい準備すればよいのか、それぞれの薬局を悩ますところだが、「基本的には在庫を置かず、患者の希望を聞いてから次回の来店までに揃える」薬局が多いようだ。
 積極派の薬局の中には、薬局内での使用数量、金額上位20〜30品目の先発医薬品に対応する後発医薬品を用意したり、長期服用が必要な循環器、消化器系統の薬剤を中心に1錠単価が100円以上の高い後発医薬品を揃えたところもある。しかし、いずれも品質そのものや質を担保するメーカーの生産体制、情報提供体制などを重視し、流通に不安がないというのが基本的な選択基準だった。

患者の根本的なニーズを、まずはきちんと受け止める

 また、こうした薬局の多くは、後発医薬品に関する説明パンフレットを用意しており、「薬価差の大きいもの、使用量の多いもの、データがあって先発品との効果の差が少ないもの」に限定し、さらにくわしい資料を準備している薬局もみられた。
 「現時点では後発医薬品への変更希望よりも、後発医薬品そのものに対する質問が多い」と、ある薬局薬剤師が語るように、コマーシャルの影響で認知度は上がっているものの、患者たちの多くは「後発医薬品のことがよくわからない」というのが現状だ。
 医師に聞きたくてもなかなか話を切り出せない患者のまなざしは、「薬局でも後発医薬品の情報を口頭や掲示などでもっと知らせてほしい」と、保険薬局の対応に強く向けられている。このような患者の根本的なニーズを、まずはきちんと受け止めたい。
 さまざまな誤解も生じているけれど、患者は「自分に有益な情報をもたらしてくれるかどうか」ということに薬局の本当の価値を見出し始めている。そこを見失わないようにしたいものだ。