最終回「薬剤師が関わる健康食品とサプリメント」

◆case◆患者さんと薬剤師のQ&A

薬剤師:薬剤師は今までエビデンスが確かな薬を中心に考えてきましたが、エビデンスが不確かな「健康食品とサプリメント」にはどのように関われば良いのでしょうか?
 
早田紀子:医薬品との相互作用はもちろんですが、今の薬局が向いている「患者=病気」という視点だけではなく、「健康」という立場で、国民に健康的で質の高い生活をサポートして行くことが重要ではないでしょうか。そのためには必要に応じて「健康食品とサプリメント」を勧めることも必要と考えます。

◆薬剤師支援memo◆

●薬剤師が「健康食品とサプリメント」に関わる理由 

 平成16年4月から「お薬手帳」に健康食品・サプリメントなどとの相互作用についての記載が求められるようになり、平成16年6月には、厚生労働省の「『健康食品』に係る今後の制度のあり方について (提言)」の中で、適切な「健康食品」の選択に当たって薬剤師のアドバイザリースタッフとしての役割が重要であると述べられています。
 また、平成20年2月には、特定健康診査の特定保健指導では、薬剤師が、食生活の改善指導において専門的知識及び技術を有すると認められる者、となりました。
 薬剤師法第1条の薬剤師の任務には、「調剤」「医薬品の供給」「その他薬事衛生」がありますが、最後の「その他の薬事衛生」に食品衛生も含まれ、特に健康食品・サプリメントとして流通しているものの中にはいかにも「医薬品」的なものも多くあり、そのような食品が消費者にとって悪い影響を及ぼさないよう、適切な指導を行うことも広い意味での薬剤師の任務と考えます。

●健康食品とサプリメントに頼らない

 基本はきちんとしたバランスのよい食事です。そのためには、厚生労働省と農林水産省が作成した「食事バランスガイド」を参考にします。しかし、健全な食生活を心掛けた上でも、栄養成分などの補給が必要な場合は、健康食品・サプリメントの利用を考えます。もともとサプリメントとは、“supplement”「補足、補完」を意味する言葉で、食生活における補助的なものです。

●とるべき健康食品とサプリメント 〜必要に応じて勧めよう〜

 きちんとした食生活では基本的に健康食品・サプリメントは不要ですが、実は必要な方もいます。
 例えば、妊婦。妊娠中に葉酸が欠乏すると胎児に重篤な外表奇形を起こす可能性があります。葉酸は、食事だけではとることがむずかしいのでサプリメントが勧められます。
 また、抗生物質のように亜鉛不足を起こす薬が多くあります。亜鉛が不足すると、味覚障害や褥瘡(じょくそう)が治りにくくなるといったことがあります。
 そして、高脂血症の治療薬(スタチン)は、コエンザイムQ10の体内での合成量を減少させることが知られています。スタチンによる副作用である横紋筋融解症は、このコエンザイムQ10の減少が関与しているとも言われていますので、欧米諸国ではスタチンの服用時には、サプリメントとしてコエンザイムQ10の併用が勧められています。
 このように、人によって不足するためにとったほうがいい健康食品・サプリメントがあるので、必要性をしっかりと把握することが大切です。

●とってはいけない健康食品とサプリメント

 食べ物や飲み物から十分摂取できているので、健康食品・サプリメントとして摂取すると知らない間に過剰摂取になるケースがあります。
 例えば、ヨウ素。世界的には不足しやすい栄養素ですが、海に囲まれた日本では土壌にヨウ素を含み、昆布などの海藻類や市販のだし類など、知らないうちに摂取しています。過剰摂取は甲状腺機能の低下を引き起こすことが知られています。
 そして、ビタミンA。過剰にとると、脂溶性ビタミンのため体から排泄されにくく、吐き気・頭痛などが起きやすいと言われています。また、妊娠前3カ月から妊娠3カ月までの間にビタミンAを過剰摂取した妊婦から生まれた児に、先天異常の割合が上昇したとの報告もあります。
 からだに良いからと言ってたくさんとればとるほど効果が上がるわけではありません。特に身近にあるものに含まれている成分については、特定の成分を過剰に摂取しないように気をつけましょう。

●健康食品とサプリメントの専門家の資格を取ろう!

 実際に数多い健康食品・サプリメントやトクホの中から消費者が適切なものを選択するには、専門家の支援が必要な場合が多いため、厚生労働省は保健機能食品等に係るアドバイザリースタッフの養成を進め、NR(Nutrition Representative、栄養情報担当者)、食品保健指導士、サプリメントアドバイザーの3資格を例示しています。薬剤師が身近な相談者として国民の健康増進に寄与するためにも専門家の資格に挑戦してみませんか?

●早田紀子(そうだきこ)のペンネームと由来

 健康について何でも相談できる薬剤師でありたい、という願いを込め、日本薬剤師会のキャッチフレーズ「そうだ、薬剤師に聞いてみよう!」をもじって「早田紀子(そうだきこ)」と名付けました。(そうだのりこ、ではありません。)

●最後に

 平成17年から3年間(30回)、早田紀子にお付き合いいただきありがとうございました。アドバンスクリエイトの池上様、坂谷様の叱咤激励により毎回なんとか原稿を作成することができ、感謝しております。
 今後も常に新しい情報を求め、的確な情報を国民に提供し、2005年度職業信頼度調査において薬剤師が3位(日本リテイル研究所)という高い信頼を保ち続けていきたいと思っています。