■プロローグ 処方せん様式変更の背景と滑り出しは

 日本の医療財政が破綻の危機にあるのは周知の事実。後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用促進で1兆円の薬剤費が節約できるとして、2006年4月、処方せん様式の変更による、いわゆる「代替調剤」がスタートし、1カ月余りが経過した。滑り出しはどうか。
  日本調剤の社長・三津原博氏によると、同チェーン薬局では後発医薬品への「変更可」にチェックされた処方せんが全体の13.3%で、うち実際に先発品から後発品に変更された割合は18.9%という(4月28日の決算説明会での発言、5月8日付リスファックスより)。同社が受けている全処方せんの2.5%が変更されたことになる。この数字が多いか少ないかはいろいろな見方があるだろうが、三津原氏の「日を追って増えている」という発言は注目に値する。

 医療費を支払えない世帯が増えている。朝日新聞の調査によれば、全国248公立病院の1病院当たり平均未収金額が、2002年の2,250万円から、05年には3,256万円になったという。わずか3年の間に1.5倍増加した計算だ。
 この間、02年に高齢者の自己負担の上限が引き上げられ、03年にはサラリーマンの自己負担が2割から3割に引き上げられている。国民の生活にも格差が広がり、生活保護世帯が01年の81万世帯から05年の105万世帯に、貯蓄ゼロ世帯は00年の12.4%から05年には23.8%に増加。国民健康保険の未加入者が増え、加入世帯でも保険料滞納率は04年で18.9%に達した。
 今後、医療保険料率のアップだけでなく、窓口で支払う自己負担が増えていくことが予想される。そうなればますます、医者に掛かりたくても掛かれない人々は確実に増える。このような背景のなか、薬剤費の低減は、国にとっても国民にとっても大きな魅力であるのは確か。
 だが一方で、今回の様式変更を、単純に医療費の削減や負担軽減という経済面だけで捉えてよいのだろうか。本レポートでは、処方せん様式の変更による、いわゆる「代替調剤」を別の角度からも捉え、薬剤師は患者にどう向き合うべきかを探った。

本レポートは、アンケートと取材をもとに構成した。ご協力いただいた方々に、この場を借りて厚くお礼申し上げます。
なお、本レポートについてのご意見は、下記までお願いします。

メールアドレス advancet@skyblue.ocn.ne.jp