第26回「サイリウム(オオバコ種子外皮)」

◆case◆患者さんと薬剤師のQ&A

患者さん:サイリウムが含まれているダイエット食品は、エネルギー源となる主栄養素の消化吸収を抑制し、そのまま体外に排泄させるデトックス効果があると宣伝していますが、本当ですか?
 
薬剤師:ヒトを対象にした確かな研究は見当たりませんし、動物を用いての調査でも効果はほとんど認められません。このようなダイエット食品については、宣伝内容を冷静に判断してください。

◆薬剤師支援memo◆

●サイリウムとは

 サイリウムは、オオバコ科オオバコ属植物の種子外皮(ハスク)を破砕したもので、粘性の強い食物繊維を多く含んでいます。サイリウムの原料として用いられる植物は、ブロンドサイリウム(プランタゴ・オバタ)、つぎにブラックサイリウム(プランタゴ・プシリウム)が多いといわれています。

●オオバコとは

 オオバコ科オオバコ属の植物で世界各国に広汎に分布しています。世界には200種ほどのオオバコがあり、地域によって使用するオオバコの種類は異なりますが、古くから民間薬として利用されてきました。
 日本薬局方ではオオバコの花期の全草が生薬のシャゼンソウ(車前草)、種子がシャゼンシ(車前子)として鎮咳去淡薬や尿路疾患用薬に配合されます。
 一般用医薬品ではプランタゴ・オバタの種子外皮を含む種子が便秘薬に配合され市販されています。

●体外排出によるダイエットをうたう食品の実際の効果

 オオバコの種子などが含まれた食品は、「脂質、炭水化物などの、エネルギー源となる主栄養素の消化吸収を抑制し、そのまま体外に排泄させる」と宣伝されています。これらの「主栄養素吸収抑制食品」の有効性は、ビーカーやフラスコの中での実験成績に基づいているようですが、ヒトや動物を用いた実験では、説明書に書いてある通常の使用量を摂取しても、脂質や炭水化物の吸収を抑制せず、脂肪組織すなわち体脂肪の減少もほとんど認められません。

●デトックス(解毒)とは?

 体から毒を出すデトックスが注目されていますが、もともと人体には有害物を解毒し排出する仕組みがあります。ダイエットと結びついてブームになっていますが、事実と相違していると排除命令が出されたものもあり、注意が必要です。

●コミッションE(ドイツの薬用植物の評価委員会)

 ブロンドサイリウムの種子および種皮について、慢性便秘、便を軟らかくして排便を容易にすることが望まれる疾患(裂肛、痔核、直腸および肛門の手術後、妊娠中)、下痢の補助的治療、過敏性大腸の治療に対する利用を承認しています。また、ブラックサイリウムの種子について、慢性便秘と過敏性腸症候群に対する利用を承認しています。

●特定保健用食品に利用されているサイリウム由来の食物繊維成分

 取り過ぎたコレステロールの吸収をおさえる「コレステロールが高めの方の食品」、おなかの調子を整える「おなかの調子を整える食品」が特定保健用食品として許可されています。

●サイリウム摂取上の注意

 サイリウムは水なしで摂取したりすると、食道や胃腸に障害が起きることがあるので250mL以上の十分な水とともに、2.5g〜10.0gを1日2〜3回摂取します。
 また、医薬品を服用した場合には、吸収を低下させることが考えられるため、少なくとも1時間以上の間隔をあけましょう。

●服用に気をつける人は?

・腸に障害がある人は禁忌です。
・II型糖尿病に対する作用など、有効性が示唆されていますが、I型かII型かの判別が難しい糖尿病の方は禁忌です。
・妊娠中、授乳中の方は、適切に用いれば経口摂取でおそらく安全と考えられていますが、妊娠中は使用すべきでないという情報があることから、妊婦が利用するときは慎重にその必要性を考慮する必要があります。
・嚥下困難者の場合は、食道や胃腸の障害が起きることがあるので十分な水とともに摂取します。

●相互作用に気をつける薬は?

・カルバマゼピン(テグレトール)→オオバコの種子により薬剤の消化管吸収が減少し、血中カルバマゼピン濃度が低下します。
・炭酸リチウム(リーマス)→オオバコの種子による消化管吸収の減少により血中リチウム濃度の減少、作用が減弱されます。
・ジギタリス製剤→ジゴキシン(ジゴキシン)、ジギトキシン(ジギトキシン)、メチルジゴキシン(ラニラピッド)、ラナトシドC(ジギラノゲンC)→オオバコの種子により薬剤の消化吸収が減少し、血中ジゴキシン濃度が低下します。
・高脂血症用剤、緩下剤→作用が増強します。
・鉄製剤(フェロミア、フェロ・グラデュメット)→キレートを形成し、相互に薬剤の吸収が阻害されます。
・ワルファリンカリウム(ワーファリン)→オオバコの種子により薬剤の消化吸収が減少し、血中濃度が低下します。  
・糖尿病薬→U型糖尿病患者の血糖値を低下させるため薬剤の効果を増強する可能性があります。