第12回 「α-リポ酸」
◆case◆患者さんと薬剤師のQ&A
患者さん:テレビ番組で話題になっているα-リポ酸ですが、「体脂肪を減らしてやせる」と報道されていました。ダイエットにいいのでしょうか?
薬剤師:痩身効果については、理論上、脂肪が分解されそうですが、ほとんどが動物試験あるいは試験管内実験の報告で、ヒトが対象ではありません。医薬品成分としても利用されていますが、滋養強壮などの効果として用いられています。α-リポ酸などのサプリメントを摂取するのはあくまで補助と考え、食生活や運動を見直すことが最も重要ですよ。
◆薬剤師支援memo◆
●α-リポ酸とは?
α-リポ酸は、別名を「チオクト酸」と呼ばれ、肝臓および酵母から発見されました。細胞中のミトコンドリアにあり、腸内細菌で合成されるため、通常は不足することはありません。しかし、年齢とともに減少するといわれています。食品では、レバーやほうれん草、ブロッコリー、トマトなどに含まれています。
●α-リポ酸の働き
α-リポ酸は、糖代謝とTCAサイクルにおいて酵素の補酵素として働いています。糖代謝においては、ピルビン酸からアセチルCoAへの変換時のピルビン酸脱水素酵素の補酵素、TCAサイクルにおいては、α-ケトグルタミン酸からスクシニルCoAへの変換時のα-ケトグルタル酸脱水素酵素の補酵素として働いています。
●医薬品してのα-リポ酸
医療用およびOTC薬には、チオクト酸と誘導体のチオクト酸アミドの製品があり、チオクト酸アミドは体内で速やかにチオクト酸になります。
医療用医薬品の用法・用量は、「チオクト酸の需要が増大した際の補給(激しい肉体疲労時)、Leigh症候群(亜急性壊死性脳脊髄炎)、中毒性(ストレプトマイシン・カナマイシンによる)および騒音性(職業性)の内耳性難聴」に、1日10〜60mgが経口投与されます。
OTC薬は、「滋養強壮、虚弱体質、肉体疲労・食欲不振・栄養障害・発熱性消耗性疾患などの場合の栄養補給(※妊娠授乳期の栄養補給の効能がある製品もある)」に、1日5〜10mgが用いられます。
●2004年α-リポ酸は食品区分へ
―スイッチ健康食品・サプリメント―
2004年3月、「医薬品の範囲に関する基準の一部改正」により食品として認められ、抗酸化作用を期待した健康食品・サプリメントが販売されています。
●相互作用に気をつける薬は?
血糖値に影響を与えるハーブやサプリメント、糖尿病治療薬との併用により、血糖低下作用が増強される可能性があります。
また、甲状腺機能異常の治療に影響を与える可能性があるので、モニターしながら使用する必要があります。
●糖尿病によい?
α-リポ酸を600〜800r/日、4週間経口投与を受けたU型糖尿病患者において、インスリン感受性および糖代謝能の有意な改善が認められたという報告があります。また、糖尿病患者において800r/日、4カ月問のα-リポ酸の経口摂取は高血糖の持続状態の指標となるHbA1cには影響しませんが、心性自律神経障害をわずかに改善するかもしれないという報告があります。
しかし、用量設定がむずかしく、糖尿病の患者さんが摂取するのは注意が必要です。
●妊婦・授乳婦への摂取
OTC薬には、妊娠授乳期の栄養補給の効能がある製品がありますが、健康食品・サプリメントとしての摂取は、安全性が確立していないため使用は避けることが望まれます。
●長期間の使用について
α-リポ酸は腎臓から排泄されるため体の中に蓄積されることはないと思われますが、医療用医薬品の添付文書には、「効果がないのに漫然と使用すべきではない」と記載されています。健康食品でも長期に使用することは注意が必要です。
●老化防止作用はあるの?
健康食品においてアンチエイジング(老化防止)といわれているのは、α-リポ酸の抗酸化作用によると考えられますが、効果については不明です。