第11回「ビタミンC」

◆case◆患者さんと薬剤師のQ&A

患者さん:貧血になりやすいので鉄剤をのんでいます。ビタミンCが鉄の吸収を良くすると聞きましたが、一緒に摂ってもいいのでしょうか?
薬剤師:ビタミンCは腸管での鉄の吸収率を上げ、貧血を予防します。鉄剤と一緒に摂るのは大変いいことですね。ぜひそうしてください。ただし、肝硬変や肝炎など肝臓に障害がある人がビタミンCと鉄剤を併用すると、鉄の吸収が高まって、肝臓の病気が悪化してしまうので注意が必要です。

◆薬剤師支援memo◆

●ビタミンCとは

 ビタミンC(アスコルビン酸)は、野菜や果物に含まれる水溶性のビタミンで、体内でコラーゲンの生成ならびに重要な抗酸化物質として働いています。しかし、体内で合成することができず、不足すると壊血病になります。

●ビタミンC不足になりやすいのは?

 アルコール中毒者、一人暮らしの男性、高齢者、野菜やフルーツの摂取が少ない人、薬物沈溺者です。食事から摂取したビタミンCもサプリメントから摂取したビタミンCも生体利用率は変わらないと言われているので、健康食品・サプリメントを上手に利用するように勧めるのもいいでしょう。

●栄養機能食品として表示許可されています。

 上限は1,000r、下限24 r
<栄養機能表示>
「ビタミンCは、皮膚や粘膜の健康維持を助けるとともに、抗酸化作用を持つ栄養素です。」
注意喚起:本品は、多量摂取により疾病が治癒したり、より健康が増進するものではありません。1日の摂取目安量を守ってください。

●摂取すべき量は?

 推奨量は1日100mgです。しかし、ビタミンCは熱に弱く、水溶性なので、食品では調理により多くが失われます。また、体外に排出されやすく、ストレスや喫煙で大量に消費され、体に蓄えておくことはできません。
 以前、ポーリング博士が提唱したビタミンC大量療法は、現在支持はされていませんが、1日1000mg程度が望ましいと言われています。なお、ビタミンCの過剰摂取で心配されるもっとも一般的な症状は、吐き気、下痢、腹痛です。

●相互作用に気をつける薬は?

・アセタゾラミド(ダイアモックス):大量のビタミンCとの併用により腎・尿路結石が起こる可能性がある。
・アスピリン:ビタミンCの尿中排泄はビタミンCの低用量では増加し、高用量では減少する。
・アセトアミノフェン:ビタミンC(3g以上)で副作用が増強すると考えられる。
・インドメタシン:ビタミンCの尿中排泄の増加、吸収を抑制する。
・マレイン酸フルフェナジン(フルメジン)、マレイン酸プロクロルペラジン(ノバミン)他:併用によりフェノチアジン系薬剤の効果が減弱する。
・ユビデカレノン(ノイキノン):抗酸化作用を増強する。
・塩酸プロプラノロール(インデラル):バイオアベイラビリティが低下する。
・結合型エストロゲン(プレマリン):血中エストロゲン濃度上昇の可能性がある。
・エチニルエストラジオール(プロセキソール):血中エストロゲン濃度上昇の可能性がある。  
・ホスフェストロール(ホンバン):血中エストロゲン濃度上昇の可能性。
・経口避妊薬:ビタミンCの血中濃度が低下。血中エストロゲン濃度上昇する。
・鉄剤:ビタミンCにより鉄剤の消化管吸収が促進され、造血作用が増強されるが、胃腸障害が出現することがある。
・ワルファリンカリウム(ワーファリン):大量のビタミンCとの併用によりワルファリンの血液凝固阻止作用が減弱する。  
・テトラサイクリン系抗菌剤:テトラサイクリン系抗菌剤の血中濃度が上昇する。

●食品添加物としてのビタミンC

 菓子や飲料などに栄養強化剤、品質改良剤、酸化防止剤として、L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L-アスコルビン酸パルミチン酸エステルが使われています。

●「誘導型ビタミンC」とは

 美白を目的に皮膚に塗った場合に、純粋なビタミンCは皮膚表面の角質を透過しにくいですが、リン酸などを結合させた「誘導型ビタミンC」は角質層の透過性が上がり、皮膚内で効力を発揮するものと考えられています。